田舎生活で幸せの閾値が下がる

 私は去年の春、事情があって前にいたところから車で1時間半ほどの山間部の田舎に引っ越してきました。田舎と一言で言っても程度が伝わらないと思いますが、我が家の窓から見えるのは田んぼと数件の民家のみ。最寄りのコンビニまでは車で8分ほどかかるというようなところです。徒歩圏内に飲食店がないため、飲みに行くには誰かに送ってもらうしかなく(タクシーや夜遅くまで運行しているバスはもちろんありません)、町で一番大きい商業施設は個人の家電屋や衣料品店が併設しているスーパーです。そもそも、1年足らずで町のすべての商業施設の規模を把握できてしまうことも、ここがいかに田舎であるかを表していると思います。

 私は引っ越す前はそれなりの都市部に住んでいましたので、越してきた当初はこんなところで生きていけるのか不安でしたし、これから何もないところで退屈な生活を送るものだと思っていました。しかし田舎で暮らすことが逆に幸福感をもたらしてくれたのです。

 例えばみなさんは、イオンモールへ行くのにワクワクするでしょうか。少なくとも昨年までの私はそんなことはありませんでした。割と都会な場所に住み、周りに何でもあるにもかかわらず、特にやりたいと思うこともなく、退屈なのが嫌だからとりあえず”何かありそうな”イオンモールに行く。そして「何かほしいものはないかな」とぶらぶらして、必要ではないけれど家にあっても困らないものを買って帰る。そんな感覚だったように思います。

 しかし一度田舎に住んでしまうと、そんな感覚でイオンモールに行くことはできません。車で片道1時間半かかるわけですから仕事のある日は、まず行きません。休日であれば行けないことはないですが、退屈だからという理由だけで行くには遠すぎます。そうすると必然的に行く回数が減るので、その後に行った時には、「田舎とは違う、なんでも揃っている」という感動を覚えます。また、わざわざ1時間半かけて行っているということは、よほどほしいけど田舎では買えないものを買いに行っていることが多いので、実際に買った時の満足度はこれまでとは比べ物になりません。

 そんなわけで私はイオンモールに行くのにワクワクするようになったのです。

 また、生活圏内にあるコンビニは24時間営業ではないので、たまに友人と深夜に少し離れた所にあるコンビニに行ったり、外食するところがないから自炊をしてみてスーパーの惣菜よりおいしい料理を作れたりと、都会でもできるけど、そのおもしろさに気づいていなかったことがたくさんあると感じました。

 都会に住んでいると便利であるが故、何をするにしても手間や時間がかからず、その結果、時間が余ります。時間が余ると時間を無駄にしているように感じ、それを避けるためにお金を使うことで充足感を得ようとします。必要ではないけど家にあっても困らないものを買ってしまうことなどがそれです。

 田舎で生活していると、先にも述べたように些細なことで幸福を感じるため、そのような方法で充足感を得る必要がありません。また、都会ほど便利ではないため何をするにも時間がかかり、暇を持て余すこともありません。また、お金を使える所が限られるので、必然的にお金もたまります。

 ご存じの通り、最近では働く場所を自分で選ぶことのできる社会になりつつあり、田舎へ移住する人も増えています。是非皆さんにも、短期間でもいいので田舎の生活を経験してみてほしいと思います。

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