「失敗の科学」という本を読みました。
この本の中で、なるほど。と思った話がありましたので、その内容についてお話します。
通常、専門的な能力というのは、長い年月をかけて努力を重ねることで次第に上達し、正確なパフォーマンスを発揮できるようになっていきます。
これは皆さんも納得のいく事実でしょう。
しかし、特定の職種においては、これに反し、訓練や経験が何の影響ももたらさないことを研究によって示されているのです。
例えば、心理療法士を対象にしたある調査では、資格を持ついわゆる「プロ」と研修生との間に治療成果の差は見られなかったとのことです。
なぜそのような結果になったかというと、心理療法士のほとんどが、治療のフィードバックを適切に受けることができない環境にいるからだそうです。
一般的に、努力を積み重ねてパフォーマンスを向上していく過程では、自分の下した判断や取った行動がもたらす影響を目の当たりにします。うまくいくこともあれば、もちろんそうでないこともあります。
うまくいかなかった場合、その原因を検証し、改善することができます。この繰り返しにより、パフォーマンスは徐々に向上していきます。
これが、心理療法士の場合はどうか。
心理療法士は、治療による効果を客観的なデータではなく、患者の反応でしか観察することができないとのことです。
そして、その患者が心理療法士に気を使って、状態の改善を誇張する傾向があることは、よく知られていることだそうです。
さらに、一旦治療が成功した患者の長期的な経過については、知る由もありません。
治療がうまくいったかどうかがわからないから、改善のしようがないということです。
この話を含めて、この本から私が学んだことは、
“成功よりも失敗に目を向けることが重要。失敗を認識し、改善していく過程で人は成長していく”
ということです。
成功は、短期的に見れば言うまでもなくプラスです。
しかし長期的な視点で考えると、むしろ失敗を重ねてそれを踏まえてより良い方向に改善していくことが、より大きな成功につながります。
これは、これまでの私にはない考え方でした。
失敗を恐れるのではなく受け入れよう!積極的に失敗しよう!
そう思わされる本でした。
『失敗の科学』失敗から学習する組織、学習できない組織
マシュー・サイド 著
有枝 春 訳
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